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就労継続支援B型の収益について報酬体系とあわせて解説

就労継続支援B型事業を開設することは、事業運営になりますので収支構造の理解が重要になります。
報酬制度を正しく理解し、収益を最大化しながら運営コストを効率化することが、持続可能な事業運営の鍵となります。
本記事では、報酬の仕組みを収支の観点から、利益を生み出す運営戦略のヒントを解説します。

障害福祉サービスにおける収支構造

「利益(就労支援事業収入)」=「基本報酬+加算-減算」ー「経費(就労支援事業に関わる費用)」
「基本報酬+加算-減算」については
地域区分(地域単価)と利用者の「人数」と「日数」にも影響します。
下図のようになります。
障害福祉サービスの収支

就労継続支援B型における障害福祉サービスとしての報酬
(給付金、就労支援事業による収益)

障害福祉サービスの報酬は「基本報酬」と「加算」によって決まります。
基本報酬は事業所ごとに以下から選択します。
・「平均工賃月月」に応じて評価する報酬体系(就労継続支援B型サービス費Ⅰ~Ⅲ)
・「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系(就労継続支援B型サービス費Ⅳ~Ⅵ)

また、どちらの報酬体系も従業員の配置基準によって基本報酬が異なります。
利用者に対して手厚い対応となる6:1は報酬単位(一般的な単価に相当)も高くなります。
利用者6名に対し従業員1名以上の場合は6:1となります。(常勤換算)

令和6年度は下記のポイントにおいて報酬改定が行われています。

報酬体系区分 見直しポイント
平均工賃月月 平均工賃月額が高い区分の基本報酬の単価を引上げ、低い区分の単価を引下げる
目標工賃達成指導員配置加算の見直し
目標工賃達成加算【新設】
平均工賃月額の算定方法の見直し
利用者の就労や精査活動等への参加等 支差率を踏まえた基本報酬の設定
短時間利用減算【新設】
共通項 新たに人員配置「6:1」の報酬体系を創設

令和6年度の報酬改定をふまえ報酬単価を下記のようにまとめています。

・就労継続支援B型サービス費(Ⅰ) (従業員配置6:1)

利用定員 20人以下 21~40人 41~60人 61~80人 81人以上
4万5千円以上 837単位 746単位 700単位 688単位 666単位
3万5千円以上
4万5千円未満
805単位 717単位 674単位 662単位 640単位
3万円以上
3万5千円未満
758単位 676単位 636単位  625単位 605単位
2万5千円以上
3万円未満
738単位 660単位 620単位 609単位 590単位
2万円以上
2万5千円未満
726単位 637単位 600単位 589単位 570単位
1万5千円以上
2万円未満
703単位 624単位 586単位 575単位 557単位
1万円以上
1万5千円未満
673単位 600単位 563単位 553単位 535単位
1万円未満  590単位 526単位 494単位 485単位 468単位

・就労継続支援B型サービス費(Ⅱ) (従業員配置7.5:1)

利用定員 20人以下 21~40人 41~60人 61~80人 81人以上
4万5千円以上 748単位 666単位 625単位 614単位 594単位
3万5千円以上
4万5千円未満
716単位 637単位 599単位 588単位 568単位
3万円以上
3万5千円未満
669単位 596単位 561単位 551単位 533単位
2万5千円以上
3万円未満
649単位 580単位 545単位 535単位 518単位
2万円以上
2万5千円未満
637単位 557単位 525単位 515単位 498単位
1万5千円以上
2万円未満
614単位 544単位 511単位 501単位 485単位
1万円以上
1万5千円未満
584単位 520単位 488単位 479単位 463単位
1万円未満 537単位 478単位 449単位 440単位 425単位

・就労継続支援B型サービス費(Ⅲ) (従業員配置10:1)

利用定員 20人以下 21~40人 41~60人 61~80人 81人以上
4万5千円以上 682単位 609単位 564単位 554単位 535単位
3万5千円以上
4万5千円未満
653単位 584単位 541単位 530単位 512単位
3万円以上
3万5千円未満
611単位 547単位 508単位 498単位 480単位
2万5千円以上
3万円未満
594単位 532単位 493単位 483単位 467単位
2万円以上
2万5千円未満
572単位 511単位 474単位 465単位 449単位
1万5千円以上
2万円未満
557単位 497単位 461単位 452単位 437単位
1万円以上
1万5千円未満
532単位 475単位 441単位 432単位 417単位
1万円未満 490単位 438単位 405単位 397単位 384単位

・就労継続支援B型サービス費(Ⅳ~Ⅵ)

利用定員 20人以下 21~40人 41~60人 61~80人 81人以上
就労継続支援B型サービス費(Ⅳ) 584単位 519単位 488単位 479単位 462単位
就労継続支援B型サービス費(Ⅴ) 530単位 471単位 443単位 434単位 419単位
就労継続支援B型サービス費(Ⅵ) 484単位 430単位 398単位 390単位 376単位

1単位あたりの単価が地域区分として設定(地域単価)

「10円」を基本とし、人件費割合と地域区分の上乗せ割合をもとに算定、下表のようになります。
地域区分は、市町村単位で1級~7級とその他、計8つに分類されています。
※横スクロールできます

サービス区分 1級地 2級地 3級地 4級地 5級地 6級地 7級地 その他
共同生活援助 11.60円 11.28円 11.20円 10.96円 10.80円 10.48円 10.24円 10円
福祉施設入所支援 11.32円 11.06円 10.99円 10.79円 10.66円 10.40円 10.21円 10円
生活介護 11.22円 10.98円 10.92円 10.73円 10.61円 10.37円 10.18円 10円
居宅介護
重度訪問介護
同行援護
行動援護
短期入所
重度障害者等包括支援
就労定着支援
自立生活援助
地域相談支援
計画相談支援
11.20円 10.96円 10.90円 10.72円 10.60円 10.36円 10.18円 10円
自立訓練
(機能訓練、
生活訓練)、
就労移行支援
11.18円 10.94円 10.89円 10.71円 10.59円 10.35円 10.18円 10円
就労継続支援
(A型、B型)
11.14円 10.91円 10.86円 10.68円 10.57円 10.34円 10.17円 10円
療養介護 10円 10円 10円 10円 10円 10円 10円 10円

愛知県における各市町村の地域区分

地域区分 市町村 備考
3級地 名古屋市
3級地 刈谷市 4級地→3級地
3級地 豊田市 4級地→3級地
5級地 みよし市
5級地 知立市 6級地→5級地
5級地 豊明市 6級地→5級地
6級地 岡崎市
6級地 瀬戸市
6級地 春日井市
6級地 津島市
6級地 碧南市
6級地 安城市
6級地 西尾市
6級地 稲沢市
6級地 大府市
6級地 尾張旭市
6級地 日進市
6級地 愛西市
6級地 清須市
6級地 北名古屋市
6級地 弥富市
6級地 あま市
6級地 長久手市
6級地 東郷町
6級地 豊山町
6級地 大治町
6級地 蟹江町
6級地 飛島村
6級地 一宮市 7級地→6級地
6級地 江南市 7級地→6級地
6級地 岩倉市 7級地→6級地
7級地 豊橋市
7級地 半田市
7級地 豊川市
7級地 蒲郡市
7級地 犬山市
7級地 常滑市
7級地 小牧市
7級地 新城市
7級地 東海市
7級地 知多市
7級地 高浜市
7級地 田原市
7級地 大口町
7級地 扶桑町
7級地 阿久比町
7級地 東浦町
7級地 幸田町
7級地 設楽町
7級地 東栄町
7級地 豊根村
その他 南知多町
その他 武豊町
その他 美浜町

 

就労継続支援B型における収益の一例

定員20名:利用者16名(稼働率80%)、人員配置7.5:1
平均工賃月額:15,000円 →614単位
地域区分:3級地 →10.86円
利用日数:1人平均20日

下記の算定式に当てはめていきます。
基本報酬+加算-減算」×「地域単価」×「人数」×「日数
一人の基本報酬は1日当たり:6,668円(614単位×10.86円)
月額に換算すると:2,133,773円/月(6,668円×16名×20日)
※簡略化のため加算、減算は無しとしています

生産活動による売上:300,000円/月
収益の合計:2,433,773円/月(2,133,773+300,000)

就労継続支援B型における費用の一例

主だった経費としては①人件費と②運営管理費(賃料・光熱費等)があります。

①人件費の一例(職員の給与等)

管理者:300,000円/月
サービス管理者:280,000円/月
職業指導員(常勤):230,000円/月
職業指導員(非常勤):105,000円/月
生活指導員(非常勤):95,000円/月
利用者(工賃支払):16名×工賃15,000=240,000円/月
合計:1,250,000円/月
R5障害福祉サービス等経営実態調査結果より(単位:円/月)

職種 常勤 非常勤
管理者 306,743 167,842
サービス管理者 280,134 150,100
職業指導員 227,705 104,759
生活支援員 210,106 95,956

②運営管理費の一例

建物賃料:400,000円/月
水道光熱費:50,000円/月
通信費:50,000円/月
雑費その他:100,000円/月
合計:600,000円/月
費用の合計:1,850,000円/月(①1,250,000+②600,000)

就労継続支援B型(就労支援事業)による利益

利益=収益(売上)ー 費用
283,773=2,433,773ー1,850,000
年額換算 3,405,276円(283,773円×12ヶ月)

就労継続支援B型は儲かるのか

企業活動における一般的な売上に相当するのは
障害福祉サービスとしての報酬になります。
国からの給付金が収入源となるため安定性は高い事業と言えます。
儲け(売上アップ)に関する要素としては下記になります。
これらを考えながら事業所運営をしていくことで儲けを出すこと(売上アップ)はできます。
・平均工賃を上げる
・利用者を集める(高稼働率)
・加算、減算への適用(法令に適用する) など

障害福祉の分野で儲けを考えてよいのか?という
懸念がある方もみえるかと思いますが
持続的に事業所を運営してくためには必要と考えます。

障害福祉サービスは開設がゴール(目的)ではなく
スタートになると考えています。

売上アップ(儲け)を考えて運営していくことは
継続的な障害福祉サービスの提供になり
それがひいては事業所および利用者の方々の喜びに繋がると考えます。

まとめ

就労継続支援B型事業の収支管理は、報酬制度を活用した収益向上と運営コスト削減の両立が重要です。
報酬の仕組みを深く理解することで、効果的なサービス提供と経営の安定化を実現できます。
適切な計画と実行で、事業の健全な成長を目指しましょう。
当事務所は同じ考えをお持ちの事業者様のサポートを実施しています。
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参考文献、出典

障害者総合支援法 事業者ハンドブック「報酬編」
障害福祉サービス等報酬改定について_令和6年
令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果

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