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11.182024
就労継続支援B型の収益について報酬体系とあわせて解説
就労継続支援B型事業を開設することは、事業運営になりますので収支構造の理解が重要になります。
報酬制度を正しく理解し、収益を最大化しながら運営コストを効率化することが、持続可能な事業運営の鍵となります。
本記事では、報酬の仕組みを収支の観点から、利益を生み出す運営戦略のヒントを解説します。
障害福祉サービスにおける収支構造
「利益(就労支援事業収入)」=「基本報酬+加算-減算」ー「経費(就労支援事業に関わる費用)」
「基本報酬+加算-減算」については
地域区分(地域単価)と利用者の「人数」と「日数」にも影響します。
下図のようになります。
就労継続支援B型における障害福祉サービスとしての報酬
(給付金、就労支援事業による収益)
障害福祉サービスの報酬は「基本報酬」と「加算」によって決まります。
基本報酬は事業所ごとに以下から選択します。
・「平均工賃月月」に応じて評価する報酬体系(就労継続支援B型サービス費Ⅰ~Ⅲ)
・「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系(就労継続支援B型サービス費Ⅳ~Ⅵ)
また、どちらの報酬体系も従業員の配置基準によって基本報酬が異なります。
利用者に対して手厚い対応となる6:1は報酬単位(一般的な単価に相当)も高くなります。
利用者6名に対し従業員1名以上の場合は6:1となります。(常勤換算)
令和6年度は下記のポイントにおいて報酬改定が行われています。
報酬体系区分 | 見直しポイント |
平均工賃月月 | 平均工賃月額が高い区分の基本報酬の単価を引上げ、低い区分の単価を引下げる 目標工賃達成指導員配置加算の見直し 目標工賃達成加算【新設】 平均工賃月額の算定方法の見直し |
利用者の就労や精査活動等への参加等 | 支差率を踏まえた基本報酬の設定 短時間利用減算【新設】 |
共通項 | 新たに人員配置「6:1」の報酬体系を創設 |
令和6年度の報酬改定をふまえ報酬単価を下記のようにまとめています。
・就労継続支援B型サービス費(Ⅰ) (従業員配置6:1)
利用定員 | 20人以下 | 21~40人 | 41~60人 | 61~80人 | 81人以上 |
4万5千円以上 | 837単位 | 746単位 | 700単位 | 688単位 | 666単位 |
3万5千円以上 4万5千円未満 |
805単位 | 717単位 | 674単位 | 662単位 | 640単位 |
3万円以上 3万5千円未満 |
758単位 | 676単位 | 636単位 | 625単位 | 605単位 |
2万5千円以上 3万円未満 |
738単位 | 660単位 | 620単位 | 609単位 | 590単位 |
2万円以上 2万5千円未満 |
726単位 | 637単位 | 600単位 | 589単位 | 570単位 |
1万5千円以上 2万円未満 |
703単位 | 624単位 | 586単位 | 575単位 | 557単位 |
1万円以上 1万5千円未満 |
673単位 | 600単位 | 563単位 | 553単位 | 535単位 |
1万円未満 | 590単位 | 526単位 | 494単位 | 485単位 | 468単位 |
・就労継続支援B型サービス費(Ⅱ) (従業員配置7.5:1)
利用定員 | 20人以下 | 21~40人 | 41~60人 | 61~80人 | 81人以上 |
4万5千円以上 | 748単位 | 666単位 | 625単位 | 614単位 | 594単位 |
3万5千円以上 4万5千円未満 |
716単位 | 637単位 | 599単位 | 588単位 | 568単位 |
3万円以上 3万5千円未満 |
669単位 | 596単位 | 561単位 | 551単位 | 533単位 |
2万5千円以上 3万円未満 |
649単位 | 580単位 | 545単位 | 535単位 | 518単位 |
2万円以上 2万5千円未満 |
637単位 | 557単位 | 525単位 | 515単位 | 498単位 |
1万5千円以上 2万円未満 |
614単位 | 544単位 | 511単位 | 501単位 | 485単位 |
1万円以上 1万5千円未満 |
584単位 | 520単位 | 488単位 | 479単位 | 463単位 |
1万円未満 | 537単位 | 478単位 | 449単位 | 440単位 | 425単位 |
・就労継続支援B型サービス費(Ⅲ) (従業員配置10:1)
利用定員 | 20人以下 | 21~40人 | 41~60人 | 61~80人 | 81人以上 |
4万5千円以上 | 682単位 | 609単位 | 564単位 | 554単位 | 535単位 |
3万5千円以上 4万5千円未満 |
653単位 | 584単位 | 541単位 | 530単位 | 512単位 |
3万円以上 3万5千円未満 |
611単位 | 547単位 | 508単位 | 498単位 | 480単位 |
2万5千円以上 3万円未満 |
594単位 | 532単位 | 493単位 | 483単位 | 467単位 |
2万円以上 2万5千円未満 |
572単位 | 511単位 | 474単位 | 465単位 | 449単位 |
1万5千円以上 2万円未満 |
557単位 | 497単位 | 461単位 | 452単位 | 437単位 |
1万円以上 1万5千円未満 |
532単位 | 475単位 | 441単位 | 432単位 | 417単位 |
1万円未満 | 490単位 | 438単位 | 405単位 | 397単位 | 384単位 |
・就労継続支援B型サービス費(Ⅳ~Ⅵ)
利用定員 | 20人以下 | 21~40人 | 41~60人 | 61~80人 | 81人以上 |
就労継続支援B型サービス費(Ⅳ) | 584単位 | 519単位 | 488単位 | 479単位 | 462単位 |
就労継続支援B型サービス費(Ⅴ) | 530単位 | 471単位 | 443単位 | 434単位 | 419単位 |
就労継続支援B型サービス費(Ⅵ) | 484単位 | 430単位 | 398単位 | 390単位 | 376単位 |
1単位あたりの単価が地域区分として設定(地域単価)
「10円」を基本とし、人件費割合と地域区分の上乗せ割合をもとに算定、下表のようになります。
地域区分は、市町村単位で1級~7級とその他、計8つに分類されています。
※横スクロールできます
サービス区分 | 1級地 | 2級地 | 3級地 | 4級地 | 5級地 | 6級地 | 7級地 | その他 |
共同生活援助 | 11.60円 | 11.28円 | 11.20円 | 10.96円 | 10.80円 | 10.48円 | 10.24円 | 10円 |
福祉施設入所支援 | 11.32円 | 11.06円 | 10.99円 | 10.79円 | 10.66円 | 10.40円 | 10.21円 | 10円 |
生活介護 | 11.22円 | 10.98円 | 10.92円 | 10.73円 | 10.61円 | 10.37円 | 10.18円 | 10円 |
居宅介護 重度訪問介護 同行援護 行動援護 短期入所 重度障害者等包括支援 就労定着支援 自立生活援助 地域相談支援 計画相談支援 |
11.20円 | 10.96円 | 10.90円 | 10.72円 | 10.60円 | 10.36円 | 10.18円 | 10円 |
自立訓練 (機能訓練、 生活訓練)、 就労移行支援 |
11.18円 | 10.94円 | 10.89円 | 10.71円 | 10.59円 | 10.35円 | 10.18円 | 10円 |
就労継続支援 (A型、B型) |
11.14円 | 10.91円 | 10.86円 | 10.68円 | 10.57円 | 10.34円 | 10.17円 | 10円 |
療養介護 | 10円 | 10円 | 10円 | 10円 | 10円 | 10円 | 10円 | 10円 |
愛知県における各市町村の地域区分
地域区分 | 市町村 | 備考 |
3級地 | 名古屋市 | – |
3級地 | 刈谷市 | 4級地→3級地 |
3級地 | 豊田市 | 4級地→3級地 |
5級地 | みよし市 | – |
5級地 | 知立市 | 6級地→5級地 |
5級地 | 豊明市 | 6級地→5級地 |
6級地 | 岡崎市 | – |
6級地 | 瀬戸市 | – |
6級地 | 春日井市 | – |
6級地 | 津島市 | – |
6級地 | 碧南市 | – |
6級地 | 安城市 | – |
6級地 | 西尾市 | – |
6級地 | 稲沢市 | – |
6級地 | 大府市 | – |
6級地 | 尾張旭市 | – |
6級地 | 日進市 | – |
6級地 | 愛西市 | – |
6級地 | 清須市 | – |
6級地 | 北名古屋市 | – |
6級地 | 弥富市 | – |
6級地 | あま市 | – |
6級地 | 長久手市 | – |
6級地 | 東郷町 | – |
6級地 | 豊山町 | – |
6級地 | 大治町 | – |
6級地 | 蟹江町 | – |
6級地 | 飛島村 | – |
6級地 | 一宮市 | 7級地→6級地 |
6級地 | 江南市 | 7級地→6級地 |
6級地 | 岩倉市 | 7級地→6級地 |
7級地 | 豊橋市 | – |
7級地 | 半田市 | – |
7級地 | 豊川市 | – |
7級地 | 蒲郡市 | – |
7級地 | 犬山市 | – |
7級地 | 常滑市 | – |
7級地 | 小牧市 | – |
7級地 | 新城市 | – |
7級地 | 東海市 | – |
7級地 | 知多市 | – |
7級地 | 高浜市 | – |
7級地 | 田原市 | – |
7級地 | 大口町 | – |
7級地 | 扶桑町 | – |
7級地 | 阿久比町 | – |
7級地 | 東浦町 | – |
7級地 | 幸田町 | – |
7級地 | 設楽町 | – |
7級地 | 東栄町 | – |
7級地 | 豊根村 | – |
就労継続支援B型における収益の一例
定員20名:利用者16名(稼働率80%)、人員配置7.5:1
平均工賃月額:15,000円 →614単位
地域区分:3級地 →10.86円
利用日数:1人平均20日
下記の算定式に当てはめていきます。
「基本報酬+加算-減算」×「地域単価」×「人数」×「日数」
一人の基本報酬は1日当たり:6,668円(614単位×10.86円)
月額に換算すると:2,133,773円/月(6,668円×16名×20日)
※簡略化のため加算、減算は無しとしています
生産活動による売上:300,000円/月
収益の合計:2,433,773円/月(2,133,773+300,000)
就労継続支援B型における費用の一例
主だった経費としては①人件費と②運営管理費(賃料・光熱費等)があります。
①人件費の一例(職員の給与等)
管理者:300,000円/月
サービス管理者:280,000円/月
職業指導員(常勤):230,000円/月
職業指導員(非常勤):105,000円/月
生活指導員(非常勤):95,000円/月
利用者(工賃支払):16名×工賃15,000=240,000円/月
合計:1,250,000円/月
R5障害福祉サービス等経営実態調査結果より(単位:円/月)
職種 | 常勤 | 非常勤 |
管理者 | 306,743 | 167,842 |
サービス管理者 | 280,134 | 150,100 |
職業指導員 | 227,705 | 104,759 |
生活支援員 | 210,106 | 95,956 |
②運営管理費の一例
建物賃料:400,000円/月
水道光熱費:50,000円/月
通信費:50,000円/月
雑費その他:100,000円/月
合計:600,000円/月
費用の合計:1,850,000円/月(①1,250,000+②600,000)
就労継続支援B型(就労支援事業)による利益
利益=収益(売上)ー 費用
283,773=2,433,773ー1,850,000
年額換算 3,405,276円(283,773円×12ヶ月)
就労継続支援B型は儲かるのか
企業活動における一般的な売上に相当するのは
障害福祉サービスとしての報酬になります。
国からの給付金が収入源となるため安定性は高い事業と言えます。
儲け(売上アップ)に関する要素としては下記になります。
これらを考えながら事業所運営をしていくことで儲けを出すこと(売上アップ)はできます。
・平均工賃を上げる
・利用者を集める(高稼働率)
・加算、減算への適用(法令に適用する) など
障害福祉の分野で儲けを考えてよいのか?という
懸念がある方もみえるかと思いますが
持続的に事業所を運営してくためには必要と考えます。
障害福祉サービスは開設がゴール(目的)ではなく
スタートになると考えています。
売上アップ(儲け)を考えて運営していくことは
継続的な障害福祉サービスの提供になり
それがひいては事業所および利用者の方々の喜びに繋がると考えます。
まとめ
就労継続支援B型事業の収支管理は、報酬制度を活用した収益向上と運営コスト削減の両立が重要です。
報酬の仕組みを深く理解することで、効果的なサービス提供と経営の安定化を実現できます。
適切な計画と実行で、事業の健全な成長を目指しましょう。
当事務所は同じ考えをお持ちの事業者様のサポートを実施しています。
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参考文献、出典
障害者総合支援法 事業者ハンドブック「報酬編」
障害福祉サービス等報酬改定について_令和6年
令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果