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1.172025
福祉・介護職員等処遇改善加算について解説
障害福祉サービスを運営していくにあたり欠かせない加算があります。
それは「福祉・介護職員等処遇改善加算」になります。
欠かせない加算ですが、その算定要件は複雑となりますので解説します。
処遇改善加算とは?
名称の通り「福祉・介護職員」の「処遇改善」を目的とした加算となり
職員の賃金改善に充てる必要があります。
令和6年6月より「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化された加算になります。
改定前は「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3加算となっていました。
※厚生労働省:制度概要・全体説明資料より
一本化された新処遇改善加算における算定要件は下記の3つです。
①キャリアパス要件
②月額賃金改善要件
③職場環境要件
新処遇改善加算はⅣの加算要件をベースに追加で要件を満たすごとに
Ⅲ→Ⅱ→Ⅰと上位加算が取得できる仕組みです。
新処遇改善加算の算定要件
要件区分 | 要件概要 | 福祉・介護職員等 処遇改善加算Ⅰ |
福祉・介護職員等 処遇改善加算Ⅱ |
福祉・介護職員等 処遇改善加算Ⅲ |
福祉・介護職員等 処遇改善加算Ⅳ |
キャリアパス要件Ⅰ | 任用要件・賃金体系の整備等 | ○ | ○ | ○ | ○ |
キャリアパス要件Ⅱ | 研修の実施等 | ○ | ○ | ○ | ○ |
キャリアパス要件Ⅲ | 昇給の仕組みの整備等 | ○ | ○ | ○ | ー |
キャリアパス要件Ⅳ | 改善後の賃金要件 (440万円一人以上) |
○ | ○ | ー | ー |
キャリアパス要件Ⅴ | 介護福祉士等の配置 | ○ | ー | ー | ー |
月額賃金改善要件Ⅰ | 新加算Ⅳの1/2以上の月額賃金改善 | ○ | ○ | ○ | ○ |
月額賃金改善要件Ⅱ | 旧ベア加算相当の2/3以上の新規の月額賃金改善 | (○) | (○) | (○) | (○) |
職場環境等要件 | 区分ごとに1以上の取組 (生産性向上は2以上) |
ー | ー | ○ | ○ |
区分ごとに2以上の取組 (生産性向上は3以上) |
○ | ○ | ー | ー | |
HP掲載等を通じた見える化 | ○ | ○ | ー | ー |
注 月額賃金改善要件Ⅰは令和6年度中は適用を猶予。また、職場環境等要件は令和6年度中は従前の要件・取組とする。
注(○)は新加算算定前に旧ベースアップ等加算並びに新加算Ⅴ⑵,⑷,⑺,⑼及び⒀を未算定だった場合に満たす要件。
キャリアパス要件、月額賃金改善要件、職場環境等要件は
次のようにまとめられています。
※厚生労働省:事業者向けリーフレットより
処遇改善加算のポイント
賃金改善額は加算額以上となるように実施する。
加算額を下回った場合は加算返還対象となります。
福祉・介護職員等処遇改善加算等に関するQ&A(第1版)
問1-9より
問:実績報告において賃金改善額が新加算等の加算額を下回った場合、加算額を返還する必要があるのか。
答: 新加算等の算定要件は、賃金改善額が加算額以上となることであることから、
賃金改善額が加算額を下回った場合、算定要件を満たさないものとして、加算の返還の対象となる。
ただし、不足する部分の賃金改善を賞与等の一時金として福祉・介護職員等に追加的に配分することで、返還を求めない取扱いとしても差し支えない。
職種別の配分ルールが廃止となり、柔軟な職種間配賦が可能です。
改定前は福祉・介護職員のみを対象としていた加算もありましたが配分ルールが廃止となりました。
職員の理解・納得ができる内容に留意し、内容を周知する必要がありますが
事業所に応じた柔軟な配分が可能となります。
令和7年度に職場環境等の要件見直しを実施する。
改定前に比べ令和7年度からは職場環境等の取り組みが大幅に増加することなります。
福祉・介護職員等処遇改善加算 Ⅲ・Ⅳ:以下の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組んでいる
福祉・介護職員等処遇改善加算 Ⅰ・Ⅱ:以下の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上うち⑱は必須)取り組んでいる
取組区分 | 具体的な内容 |
入職促進に向けた取組 | ① 法人や事業所の経営理念や支援方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化 |
② 事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築 | |
③ 他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築(採用の実績でも可) | |
④ 職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力向上の取組の実施 | |
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | ⑤ 働きながら国家資格等の取得を目指す者に対する研修受講支援や、より専門性の高い支援技術を取得しようとする者に対する各国家資格の生涯研修制度、サービス管理責任者研修、喀痰吸引研修、強度行動障害支援者養成研修等の業務関連専門技術研修の受講支援等 |
⑥ 研修の受講やキャリア段位制度等と人事考課との連動によるキャリアサポート制度等の導入 | |
⑦ エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入 | |
⑧ 上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保 | |
両立支援・多様な働き方の推進 | ⑨ 子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指すための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備 |
⑩ 職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備 | |
⑪ 有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標(例えば、1週間以上の休暇を年に●回取得、付与日数のうち●%以上を取得)を定めた上で、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけ等に取り組んでいる | |
⑫ 有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消に取り組んでいる | |
⑬ 障害を有する者でも働きやすい職場環境の構築や勤務シフトの配慮腰痛を含む心身の健康管理 | |
⑭ 業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実 | |
⑮ 短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業者のための休憩室の設置等健康管理対策の実施 | |
⑯ 福祉・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援やリフト等の活用、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施 | |
⑰ 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備 | |
生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための業務改善の取組 | ⑱ 現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している |
⑲ 5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている | |
⑳ 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている | |
㉑ 業務支援ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入 | |
㉒ 介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入 | |
㉓ 業務内容の明確化と役割分担を行い、福祉・介護職員が支援に集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う | |
㉔ 各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施 | |
やりがい・働きがいの構成 | ㉕ ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の福祉・介護職員の気づきを踏まえた勤務環境や支援内容の改善 |
㉖ 地域社会への参加・包容(インクルージョン)の推進のための、モチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施 | |
㉗ 利用者本位の支援方針など障害福祉や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供 | |
㉘ 支援の好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供 |
要するに下記の取り組みが必要ということになります。
福祉・介護職員等処遇改善加算 Ⅲ・Ⅳを算定するには7つ以上の取り組み
福祉・介護職員等処遇改善加算 Ⅰ・Ⅱを算定するには14以上以上の取り組み+「⑱現場の課題の見える化」
※Ⅰ・Ⅱにおいては、情報公表システム等で職場環境等要件の各項目ごとの具体的な取組内容の公表を求める予定
令和6年度中は猶予、経過措置期間となりますが
令和7年度からは新処遇改善加算Ⅰ~Ⅳへ移行が必須となります。
処遇改善加算の取得額
①1か月あたりの総単位数(基本報酬に加算・減算を加味)
②上記①に処遇改善加算の加算率をかける
③上記②に地域単価をかける
まとめ
令和6年度より処遇改善加算が一本化されました。
猶予・経過措置期間となっておりましたが令和7年度より本格移行となります。
処遇改善加算は職員の賃金改善手段のひとつとなります。
職場環境等の改善に向けた取り組みが大幅に増加することからも
事業所の仕組みや制度を見直すきっかけとし、安定した事業所運営につなげていきましょう。
福祉・介護職員の処遇改善に向けての改定は今後も継続していくと考えられます。
複雑な制度改定に関しては専門家にお願いして、事業運営に注力したいと思うことはありませんか?
当事務所は処遇改善加算についてもサポートを承っております。
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参考文献、出典
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定での見直しの概要・令和6年度の申請様式等
就労移行支援・就労支援(A型・B型)事業所 運営・管理ハンドブック