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2つの会計:財務会計と管理会計

会計は目的別に大きく「財務会計」と「管理会計」の2つの会計に分けられます。
前職にて実務として「管理会計」に携わってきましたので
会計に馴染みのない方向けに会計の種類について本記事は記載しています。

財務会計と管理会計の比較

2つの会計について主な違いをまとめると下表のようになります。

財務会計 管理会計
目的(何のため?) 株主や取引先など
利害関係に対する情報開示
経営層への状況報告(経営管理)
課題抽出、経営方針などの意思決定
報告先(誰のため?) 外部向け(株主、取引先) 内部向け(経営層)
報告様式、ルール 会計基準に従う(決算書・財務諸表) 各企業の独自様式でよい(予実管理、収益分析など)
報告期間 事業年度単位(半期・四半期) 定めはなく企業ごとに異なる(月次単位、都度など)
視点 過去(実績)に基づくお金の管理 将来に向けたお金の管理(将来予測、計画)
企業における主な担当部署 経理 経営戦略、財務戦略
必要性 義務 任意

財務会計:株主や取引先に向け、実績ベースの情報開示を行う
管理会計:経営層に向け、将来計画などの報告を行う

管理会計の必要性

財務会計については会計基準に則り、報告が義務付けられているため、必ず実施するものになります。
一方、管理会計については報告義務がありませんので、実施する必要性が分からないと感じる方もいるかもしれません。

ポイントになるのは視点が将来目線であるところにあります。
1年後、3年後、5年後など将来にどんな状態にしたいのか(目的地)を設定し
経営の「現在地」と「目的地」を繋ぐ管理手段が管理会計となります。

飛行機が目的地に向かうときに指針にする地図やコンパスのようなものです。
行き当たりばったりで目的地に行くことも不可能ではないのかもしれませんが
地図やコンパスのない飛行機で目的地に辿り着くのは至難の業です。

経営も同じです。
将来の状態(目的地)を設定せずに事業運営すること
経営管理を行わずに事業運営すること
これらは至難の業といえると思います。

管理会計による経営分析

管理会計を用いた経営分析の具体例として
事業別、サービス別に分析を行うものがあります。

例えば次の売上となる企業の経営は順調でしょうか?

昨年度 当年度 成長率(昨年度比)
事業売上 3,000万円 3,100万円 3.3%

昨年度比+3%の売上成長です。
利益を確認するには費用を差し引いく必要もありますので
売上情報だけでは判断できませんが
このまま順調に経営を進めていけばよいようにもみられます。

この企業が事業を2つ行っていた場合に
事業別に分けた場合はいかがでしょうか

昨年度 当年度 成長率(昨年度比)
A事業売上 2,000万円 2,200万円 10%
B事業売上 1,000万円 900万円 ▲10%
売上合計 3,000万円 3,100万円 3.3%

昨年度比+3%の売上成長はもちろん変わりませんが
A事業とB事業を分けて管理することで
A事業は+10%と順調ですが、B事業は▲10%と不調であることが分かります。

単純な事例ですが管理会計を行うことで
このような効果があります。

就労支援事業会計

就労支援事業は指定事業者等ごとに経理を区分することが求められています。
※「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」「就労移行支援」は強制適用
※運営法人が社会福祉法人の場合、「社会福祉法人会計基準」が適用されます

就労事業会計における会計区分では
「生産活動」に係る会計と
「福祉事業活動」に係る会計を明確に区分します。
同一事業所においても複数の生産活動を行う場合は
原則として作業種別ごとに会計を区分することも求められます。

就労支援事業会計において会計を区分することが定められていますが
管理会計の概念を理解すると
必要性がイメージしやすくなります。

まとめ

会計は目的別に大きく「財務会計」と「管理会計」の2つの会計があります。
管理会計を用いることで適切な経営管理につなげることができます。
就労継続支援事業において「就労支援事業会計」に基づく必要があります。
当事務所は運営(会計)サポートにも対応しております。お気軽にお問い合わせください。
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参考文献、出展
『就労支援事業会計の運用ガイドライン』(令和3年度 厚生労働省障害者総合福祉推進事業)

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